在庫商品やすぐに商品を確保して輸出することができる状況においては、見積書を提出して買主から代金の支払いを受けたらすぐに輸出となることが多く、こういうケースでは売買契約書を別途作成することはほぼないです。しかし、商品を調達に時間がかかる場合にはSales Contract(売買契約書)を作成して、支払い条件や納期などの取り決めをします。また、銀行でのT/T送金やL/Cの開設で買主からProforma Invoiceの提出を求められることがあります。Proforma Invoiceは、仮のInvoiceということなのでどちらかというと見積書に近い存在ですが、L/Cの開設用に用意するProforma Invoiceでは商品の情報や取引条件など細かく記載しますので、売買契約書の役割を果たしているともいえなくない書類です。売買契約に関連する書類として、Sales ContractとProforma Invoiceについて解説していきます。
SALES CONTRACT
Sales Contractは、売主と買主のあいだで輸出する商品、個数、貿易条件、支払い条件などの取り決めをした商品売買の契約書です。取引条件に合意した場合は買主、売主のそれぞれが署名をして合意文書とします。Sales Contractには決まった書式はありませんが、次のような内容を含めて書類を作成することが多いです。
- 売主(輸出者)の情報
- 買主(輸入者)の情報
- 貿易条件
- 商品情報
- 価格
- 個数
- 代金の支払い方法
- 売主の銀行口座の情報
- 納期
- 買主、売主の署名欄
サンプルの書類は、受注時に商品代金の10%をデポジットとして支払いを受け、商品調達後船積みの予定が決まったら、残金の支払いを受けて船積みする条件のSales Contractの参考例です。(画像をクリックすると拡大表示されます)売主欄に署名して買主にメールし、買主欄に署名をしてもらいます。買主の署名をされたSales Contractを受け取り、オーダー時のデポジットとして商品代金の10%の支払いを受けたら売買契約が成立したことになり、商品の調達をします。商品の納期が確定して船積みの予定が決まったら、買主に通知して残金を受け取り商品の船積みをします。
PROFORMA INVOICE
右のサンプルは中古車をスリランカへ輸出する際に、輸入者がスリランカの銀行でL/Cを開設する目的で使用するProforma Invoiceの参考例です。Proforma Invoiceは、Invoiceを構成するのに必要な情報を記載することに加えて、買主側から何か指示があればその指示に従って書類を作成します。この参考例ではスリランカの銀行から、①商品、②海上運賃、③海上保険のそれぞれの金額の明細がわかるように分けて記載するようにとの指示があり、このような構成となっています。B/L、Commercial Invoice、海上保険証券など提出する予定の書類も記載しています。
世界中の金融機関においてマネーロンダリング対策で海外へ送金をする際にその送金の根拠となる書類の提示を求めるケースが多くなっています。その時に提示する書類として買主からProforma Invoiceの提出を求められることがあります。T/T送金で銀行に提示するためのProforma InvoiceはL/Cの開設に使用するProforma Invoiceほど厳密な書類である必要はないので、商品の見積もりで作成した見積書のタイトルの"Quotation"を”Proforma Invoice”に書き換えた書類で十分な場合が多いです。少なくともその書類には、①売主の情報、②買主の情報、③商品の情報と価格、④合計金額、⑤売主の銀行情報、は含まれている必要はあると思います。買主が必要とする書類ですので、買主の意向に沿って作成をします。
まとめ
輸出の売買契約に関連する書類として、Sales ContractとProforma Invoiceについて解説をしました。 Sales Contractは形式上は契約書ですが、買主が一方的にオーダーをキャンセルしたいと言い出した時に、海外にいる相手に対して契約不履行として法的処置をすることは極めて難しいです。したがって、Sales Contractは売主と買主のあいだで取引条件を確認する書類というだけのものと理解して、代金未払いのトラブルの可能性に対して準備をしておく必要があると思います。その時に重要となるのが、デポジットの金額をいくらに設定するかということです。海外の取引先からオーダーがキャンセルされたとしても、その後の取引を考えると基本的に国内の仕入れ先に発注済みの商品のキャンセルをすることはできないです。同業者または別の海外の取引先に転売可能かどうか見極めて、値引きして販売する必要がありそうであればその値引きの原資となる程度の金額をデポジットとして設定しておく必要があると思います。そうしておけばデポジットを返金しない条件でキャンセルを受ける判断ができます。他社への転売が難しいと思われる特殊なオーダーの場合は全額前金以外は受注しない方針にするなど、Sales Contractを作成するときには突然オーダーをキャンセルしたいと言われたときにどういう対応が可能なのか考えて、支払い条件などの設定をする必要があると思います。