輸出の海上保険

外航貨物海上保険は、英国保険市場において作成された協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)に規定されている(A)条件、(B)条件、(C)条件の3種類があります。(A)条件は輸送中の盗難や商品の破損まで対応しており補償される事故の範囲が広いです。そのかわり保険料が高くなります。(C)条件は補償される事故の範囲が狭いですが、その分、(A)条件より保険料は安くなります。(B)条件は、補償内容や費用の面で(A)条件と(C)条件の中間的な位置づけになります。

(C)条件の海上保険は、船の沈没や火災など発生で貨物が全損した場合や海難事故で共同海損が宣言された場合に費用が補償される保険で、万が一の事故で発生した損害に対して補償される内容となっています。海上輸送では、海難事故など航行中に生じた損害または費用を船主および荷主で分担し合うという制度があり、「共同海損」と呼ばれています。船主が「共同海損」を宣言すると貨物の被救助価額で按分された金額の共同海損分担金が荷主に請求され、(C)条件の海上保険をかけていればこの費用は保険でカバーされます。海上保険をかけていない場合は、荷主がこの費用を実費負担することになり、分担金の支払いをしない限り貨物の引渡しはされないことになります。海上保険をかけずに輸出して共同海損が宣言された場合、この費用は輸出者と輸入者のどちらが負担すべきかもめる可能性がでてきますので、万が一の備えて(C)条件の保険をかけておいたほうがいいと思います。

(A)条件の海上保険は、(C)条件で補償される内容に加えて、輸送中の商品の破損や盗難までカバーされる補償内容で、新品の商品の輸出で輸送中の破損や盗難をカバーしたいというケースで利用します。またはL/Cで代金を決済する場合に、(A)条件の海上保険をかけるように指示がある場合がありますので、この場合も(A)条件の海上保険ををかけます。輸出先で商品の破損や盗難が発生が確認されたときは保険会社に連絡して保険処理をしますが、輸出先国で貨物の引渡しを受けてから14日以内にClaim Noticeを船会社に提出して、それに対する回答を書面で受けておく必要があります。万が一のトラブルに備えて保険処理の手順について保険会社に確認しておくとよいと思います。

海上保険の費用の計算方法は「CIF価格 x 110% x 保険料率」で計算できます。たとえばCIF価格が100万円の商品を輸出して保険料率が0.5%の場合は、5,500円 (1,000,000円 x 1.1 x 0.005 = 5,500円)が保険料となります。ほとんどの保険会社で海上保険の最低料金を3,000円と設定しているため、計算した金額が3,000円未満の場合は3,000円が保険料となります。

 
【海上保険の種類と補償内容】
事故の種類保険条件
ICC (A)ICC (B)ICC (C)
火災・爆発
船舶または艀の座礁
陸上輸送用具の転覆・脱線
船舶・艀・輸送用具の水以外の他物との衝突・接触
避難港における貨物の荷卸
共同海損
投荷
波ざらい X
地震・噴火・雷 X
積込・荷卸の際の水没または落下による梱包1個毎の全損 X
海・湖・河川の水の輸送用具・保管場所等への侵入 X
あらゆる人または人々の悪意のある行為(不法行為) X X
雨・雪等による濡れ X X
海賊行為 X X
その他の偶発的な損害(破損、盗難など) X X
*上記は協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)による一般的な補償内容で、保険会社と交渉して特約をつけることで補償される内容を追加することが可能な場合があります。