輸出の輸送方法

 輸出ビジネスで利用される輸送方法は大きく分けて海上輸送と航空輸送の2種類に分けられます。海上輸送はコンテナ船、在来船、RORO船と貨物の種類によって異なる輸送形態があります。航空輸送では、EMS、DHL、UPSなどの国際宅配サービスや航空フォワーダーを利用したサービスがあります。海上輸送、航空輸送に加えてもう一つ、複数の異なる輸送形態を組み合わせて輸送する国際複合輸送があります。例えば、ウラジオストックまでコンテナ船で海上輸送をして、ウラジオストックから鉄道でロシア国内を通過してヨーロッパまで貨物を運ぶシベリア・ランドブリッジは海上輸送と鉄道輸送を組み合わせた輸送形態ですし、海上輸送と航空輸送を組み合わせたシー・アンド・エアーという形態のサービスもあります。それぞれ個別に解説していきます。

海上輸送

【コンテナ船】

海上輸送ではコンテナ船での輸送が一般的です。コンテナ船のコンテナは輸送する貨物に応じていくつか種類があります。温度管理を必要としない通常貨物を運ぶためのドライコンテナ、冷蔵・冷凍貨物を運ぶために温度調節ができるリーファーコンテナ、コンテナの天井がないオープントップコンテナや天井と左右の壁がないフラットラックコンテナなどがあります。コンテナのサイズは20FT、40FTの二種類があり、40FTコンテナでは天井の高さが通常コンテナより高いハイキューブコンテナがあります。輸出する貨物のサイズや貨物の性質に合わせてコンテナの種類を選びます。

【在来船】

在来船は、コンテナ船が普及する前から利用されている一般の貨物船のことを指し、コンテナに収まらない長尺貨物や重量物などの特殊貨物を輸送する場合に利用されます。

【RORO船】

RORO船とは、船首などにランプウェーを備え、自動車が自走して船内に格納できる船のことをいいます。主に中古車や建設機械の輸出する際に使用されます。RORO船のなかでも車両を効率よく輸送するために特別に開発された船のことをPCC (Pure Car Carrier) と呼ばれることもあります。

航空輸送

【国際宅配便】

EMS、DHL、UPSなどの国際宅配サービスでは客先の住所までのドアデリバリーが基本ですので、輸出者にとっても輸入者にとって手軽で便利な輸送方法です。小さな商品を少量輸出する場合や商品サンプルや商品カタログを発送する場合などによく利用されます。

【航空フォワーダー】

国際宅配便のサービスは便利ですが取り扱いできるサイズや重量で制限がありますので、大型の貨物を航空便で輸送手配をする場合は航空フォワーダーのサービスを利用します。また海上コンテナと同様に温度管理ができる保冷コンテナがありますので、温度管理が必要な商品を輸出する場合は航空フォワーダーのサービスが選択肢になります。

国際複合輸送

【シベリア・ランド・ブリッジ】

シベリア・ランド・ブリッジ(Siberia Land Bridge)はロシアのシベリア鉄道を利用して日本から欧州、中近東、中央アジア向けに貨物を輸送するサービスで、日本からはウラジオストックまでが海上輸送でウラジオストックから先は鉄道輸送になります。したがって、海上輸送と鉄道輸送と組み合わせた複合輸送サービスとなります。

【シー・アンド・エアー】

シー・アンド・エアーは、航空輸送のスピードと海上輸送の運賃の安さを組み合わせた複合輸送サービスです。例えば、日本から北米西海岸までコンテナ船で海上輸送をして北米西海岸からヨーロッパの主要都市向けに航空輸送するサービスがあります。日本からヨーロッパの主要港まで海上輸送した場合、1か月程度は輸送日数がかかります。一方、航空輸送の場合は輸送日数は短くなりますが輸送費がかかります。海上輸送と航空輸送を組み合わせることで輸送費をおさえつつ輸送日数を短縮するサービスとなっています。

まとめ

 商品を輸出する時の輸送方法として海上輸送、航空輸送、国際複合輸送について解説しました。コンテナ船での海上輸送では、コンテナに満たない量の貨物については小ロットの貨物の輸送を手掛ける海上混載輸送(LCL)のサービスがあります。海上混載輸送はかつては普通品の貨物のみの取り扱いでしたが、危険品混載、冷蔵冷凍混載など商品の性質に合わせて利用できるサービスの選択肢が広がっています。最初からフルコンテナで輸出できればいいですが、取引の最初の段階では小ロットから取引がスタートすることが多いです。こうした時に海上混載輸送が強い味方となります。