貿易の取引条件

貿易取引では、売主と買主の間でそれぞれの国の商習慣の違いなどによって誤解が生じないようにインコタームズ(Incoterms)の規定にしたがって取引条件(Trade Terms)を決めて買主に商品の価格を提示するのが一般的です。インコタームズはフランスのパリに本部を置く国際会議所(International Chamber of Commerce)が制定した貿易の取引条件についての国際規則で、商習慣の違いによる誤解を回避するため売主と買主の間でのリスク移転時点や運賃や保険などの費用の負担区分について細かく規定しています。

 

インコタームズ(Incoterms)

インコタームズは1936年に最初のルールが策定されてから何度か改訂が行われており、現時点では2020年1月1日発効の「Incoterms 2020」が最新版です。インコタームズ2020では、「いかなる輸送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路輸送のための規則」の2つのクラスに分類し、全部で11の規則があります。インコタームズの規則はアルファベット3文字で表記され、この3文字と商品の引き渡地を組み合わせて使用します。例えば、海上輸送でシンガポール港までの輸送費込みの価格であることを示すには、「CFR Singapore」と表記します。インコタームズ2020で規定されている11の規則は下記の通りです。

インコタームズ 2020
1. いかなる単数または複数の運送手段にも適した規則 (Rules for Any Mode or Modes of Transport)
EXW Ex Works (named place of delivery) 工場渡し(指定引渡地)
FCA Free Carrier (named place of delivery) 運送人渡し(指定引渡地)
CPT Carriage Paid To (named place of destination) 輸送費込み (指定仕向地)
CIP Carriage and Insurance Paid To (named place of destination) 輸送費保険料込み(指定仕向地)
DAP Delivered at Place (named place of destination) 仕向地持込渡し(指定仕向地)
DPU Delivered at Place Unloaded (named place of destination) 荷卸込持込渡し (指定仕向地)
DDP Delivered Duty Paid (named place of destination) 関税込持込渡し(指定仕向地)

2. 海上および内陸水路運送のための規則(Rules for Sea and Inland Waterway Transport)
FAS Free alongside Ship (named port of Shipment) 船側渡し(指定船積港)
FOB Free on Board (named port of shipment) 本船渡し(指定船積港)
CFR Cost and Freight (named port of destination) 運賃込み(指定仕向港)
CIF Cost Insurance and Freight (named port of destination) 運賃保険料込み(指定仕向港)

 

まとめ

インコタームズ 2020の11の規則の中でよく使われるのは、海上輸送であればFOB、CFR、CIF、航空輸送であればCPT、CIPではないかと思います。インコタームズは貿易取引に従事するすべての人が理解をしているべき取引条件ではありますが、輸出ビジネスでは貿易に不慣れな相手が取引先のケースもありますので、トラブルを避けるため費用負担の区分など念押しで確認したほうがいいです。例えば、海上輸送で船会社へ支払う費用は、①日本側でかかるLocal Charge(THC、B/L Feeなど)、②日本の港から仕向け港までの海上運賃、③仕向け地でかかるLocal Charge(THC、D/O Feeなど)と3つの区分に分けることができますが、CFR条件では①と②は輸出者、③は輸入者が負担するのが一般的ですので、初めて取引する相手には費用負担の区分について共通の認識を持っているのか念のため確認したほうが安心です。