輸出の代金決済方法

輸出の代金の決済方法は銀行の電信送金(T/T)によって支払いを受けるのが一般的で最初の選択肢となりますが、輸出する商品や輸出先国の事情で信用状(L/C)での決済が取引の条件となる場合があります。もちろん商品を輸入する取引先がのL/Cでの決済を希望するケースもあります。小額の支払いを受け取るケースではPaypalなどの決済サービスで代金の支払いを受け取る事例も増えています。

T/T (Telegraphic Transfer)

T/Tとは銀行のを経由して電信で送金する方法で、貿易の代金決済として一般的な送金の方法です。送金側、受取り側の双方で銀行の手数料が発生します。受取り側の銀行手数料は銀行との契約によりますが、円建てで受け取る場合は被仕向け送金手数料と円為替取扱手数料で最低でも4000円/件ぐらいの手数料が発生します。そして手数料は送金される金額に応じて高くなります。また、バイヤーが送金を依頼した海外の銀行と日本でお金を受け取る銀行との間にコルレス契約がないと、別の銀行を経由させてお金が届くので、「経由銀行の手数料」が別途発生する場合があります。したがって、余計なコストがなるべく発生しないように海外にネットワークのある大手銀行(三菱UF銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など)を受け取り銀行として指定しておくのがベターです。

L/C (Letter of Credit)

L/Cとは輸入者の依頼で銀行が発行する荷為替信用状のことで、輸入者側の信用状発行銀行が輸入者の支払いを確約する仕組みです。L/C決済ではL/Cに指示された書類を指示された内容どおりに作成して、商品の船積み後に日本側の銀行に提出します。そして日本の銀行から海外の輸入者側の銀行に書類が送られ、書類の内容に不備がなければ代金の支払いがされることになります。日本の銀行にL/Cの書類を差し入れるときに、L/Cを「買取」扱いか「取立」扱いにするか選びますが、資金繰りなどに問題がなければ「取立」扱いでいいと思います。「取立」と「買取」との違いは、「取立」の場合は海外の信用状発行銀行が輸出者が提出した書類を確認して日本の銀行に支払いがされたときに自社の口座にお金が入金されますが、「買取」の場合は日本の銀行に書類を差し入れするとすぐにお金が口座に入金されます。しかし、これは日本の銀行が立替払いをしているだけなので、信用状発行銀行から実際に支払いがされるまでの期間は金利が発生しますし、「買取」扱いにしてもらうには事前に銀行の審査を受ける必要があります。L/C決済で代金の支払いがされるまでの日数は、支払い条件がat sightのL/Cを「取立」扱いとした場合、信用状発行銀行の対応にもよりますが日本の銀行に書類を差し入れてから2週間程度はかかります。

L/Cによる代金決済はT/Tと比べると書類の準備に手間がかかりますし、費用面で高コストです。銀行にL/Cの「取立」を依頼した場合、日本の銀行に支払う手数料は主に下記の4つです。

  1. 信用状通知手数料:6,000円
  2. 円為替取扱手数料:取立金額の1/10%(最低限の費用として5,000~10,000円のミニマムの設定があります。) 
  3. 取立手数料:5,000円
  4. 郵便料:信用状発行銀行に書類を発送する費用です。取立を依頼する銀行によって金額が異なります。

このほかに差し入れた書類に不備があった場合は信用状発行銀行からDiscreapncyの通知があり、そのペナルティーや手数料が差し引かれて日本の銀行に支払いがされますのでその分は先方銀行手数料として差し引かれた金額が入金されます。B/L、Invoice、原産地証明などL/Cに指定された書類は信用状統一規則にのっとって作成される必要がありますので、こちらの内容もあわせて確認しておかれるとよいと思います。

PayPal

PayPalはオンラインショッピングでの決済を簡単にするためにアメリカで開発された仕組みで、Paypalのアカウントを開設すればネット上で簡単に送金や代金の受取りができます。手数料は送金する際には発生しませんが、お金を受け取る場合は送金額の4~5%程度の手数料が発生します。小額の送金の場合はT/Tの銀行手数料より安く済みますので、状況に応じて使い分けすると便利です。例えば輸出する商品の代金として10,000円を受け取る場合、T/Tでお金を受け取るとすると受け取り側の銀行手数料で4,000円程度の費用がかかります。もちろん送金する側でも銀行手数料が発生します。こういう小額の送金をするケースではPayPalでの代金決済は低コストで便利です。

その他の代金の決済方法

PayPalが登場する以前は小額の送金を受け取る手段としてWestern Union、MoneyGramなど個人対個人の送金サービスを利用することがありました。小額の送金では銀行のT/Tより送金手数料が安いからです。手数料は送金する側のみに課され、受け取り側が支払う手数料はなく額面どおりの金額を受け取ることができます。ただ企業あてには送金できませんので、個人名義で送金をさせて受け取りの名義人となった本人がWestern UnionまたはMoneyGramのエージェントの窓口にお金の受け取りに行くことになります。日本ではWestern UnionまたはMoneyGramエージェントがどこにでもあるという状況ではありませんので、エージェントの窓口まで行く手間や交通費を考えるとPaypalでの決済のほうが便利であると言えると思います。