2023年10月に導入されたインボイス制度では、消費税の仕入税額控除をするには適格請求書発行事業者から発行される適格請求書が必要となり、輸出する商品の仕入れ先が適格発行事業者でない場合は仕入税額控除ができない仕組みとなりました。輸出ビジネスでは輸出による消費税の還付金を利益として計算して取引しているケースが多くあり、消費税の仕入税額控除ができないとなるとビジネスに大きな影響が出てしまうことになります。
具体的な事例で見てみますと、中古車輸出ビジネスでは中古車販売業者用のオートオークションで中古車を買い付けして輸出することが一般的ですが、ほとんどのオートオークション運営会社がその会員に適格請求書発行事業者の登録番号の申告を義務づけており、2023年10月以降は適格請求書発行事業者でないとオークションでの中古車の売買に参加できないようにしています。したがって、オートオークション経由で中古車を仕入れた場合は、オークションのすべての参加者が適格請求書発行事業者であるため、輸出後に消費税の仕入税額控除ができないという事態は発生しない仕組みになっています。しかし、中古車輸出ビジネスでは個人から買い取りした車両を輸出することもありえますが、一般の個人は適格請求書発行事業者ではないですので、この場合は仕入税額控除はできないことになるのでしょうか?
先に答えを言ってしまうと、条件付きですが「仕入税額控除できる」ということになります。中古品を個人から買取りして販売するケースで、古物商の免許を受けて営業している場合には「古物商特例」が適用され、これまでと同様に仕入税額控除ができることになっています。しかし、古物商特例が適用されるには下記の①~④のすべての要件を満たす必要がありますので注意が必要です。
【古物商特例の適用条件】
① | 古物商であること。 |
② | 適格請求書発行事業者ではない者から仕入れた古物であること。
*買取りの相手方が適格請求書事業者でないことを客観的に明示できるようにしておく必要あります。
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③ | 仕入れた古物が、当該古物商にとっての棚卸資産(販売する目的で保有する商品)であること。
*業務で使用する消耗品にはこの特例を適用させることはできないです。
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④ | 下記の5つの事項が記載された帳簿を保存すること。
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中古車や中古機械など中古品を輸出するビジネスを展開する場合には、適格請求書発行事業者以外から仕入れをする可能性を想定して「古物商特例」が適用される条件を満たすように事前に対応策を考えておく必要があると思います。